プロになりたい訳でもないし、とにかく目立たない事に全神経を集中させて、過ごしていくつもりだった。

理想は、いてもいなくても気づかれないやつ。

しかし、俺のささやかな願いは、あっけなく崩れ去る事になる。

そして、今思い出しても、心の奥を誰かにギュと掴まれているような感覚が突然襲って来る。

季節外れの転校生が現れた日。
俺の日常は予想もしなかった方向に向かい
進んで行った。


俺のクラスに転校生が来るらしい。
この手の噂話はあっという間に校内を駆け巡る。
女子だとか、かなりの美人らしいとか。
俺にはどうでもいい話ばかりだった。

どうせ関わるつもりなどないのだから、
当たり前だった。
普段より、浮き足立っているクラスメイトを
眺めながら
俺は、一瞬でも早くこの騒ぎが収まることを
心の底から願っていた。