パーティの余韻が抜けないまま、熱っぽい会場を後にしたミカエルとアンは、自宅へと向かう馬車に隣り合わせで乗っていた。


ガタガタと馬車が揺れるたびに肩がぶつかり合う隙間ない座り方で、アンのむき出しの肩にミカエルの熱が何度も触れる。アンは顔の火照りが取れなかった。


ミカエルは指を絡めてアンの手を握ったまま親指でずっとアンの手の甲を擦っている。


アンがふと顔を見上げれば、窓から入る月明かりに白髪碧眼の美が浮かび上がる。


アンの視線に気づくとミカエルが小首を傾げて、またあざと可愛いを見せつけてくる。


「どうした、アン?」

「別に……ミカエルって綺麗だなって思っただけ」


口を突いた言葉に嘘はなかったのだが、こういうこというのはあまりアンらしくなかったかと思ってまたアンは顔が火照った。


身体中を巡る血がいつもより多い気がして、顔も身体も熱かった。


アンの火照る顔が月明かりに浮かんで、可愛いアンが美味しそうに熟れている。ミカエルはゴクリと喉が鳴った。


「アン、好き」

「え?」

「今日は、特別に可愛い」

「えぇ?!」

「俺のこと好きって言ってる顔に見える。違う?」

「ち、違う違う違う違う」