さらに歯に衣着せぬミカエルにはアイタタタとアンの頭痛も増すばかりだ。


何か悪いですかとミカエルが平然と笑うのだが、矛盾したことをしているのがわかっているのだろうか。


「あなた見慣れ過ぎて忘れたかもしれないけれど、私はこのパーティ会場内の誰より醜い顔の女よ?」


アンが自分の醜い右頬のでこぼこを手の平で撫ぜて、視線を斜め下に向ける。


「傷物令嬢は事実でしょ。王太子なのに、こんな公式の場でおかしなことを言ったら品位を疑われるわ」


傷物のアンよりも美しい令嬢ならこの会場にごまんといる。アンが視線を逸らすと、ミカエルはクスッと可愛いものを愛でる目をして笑う。



「いいか、アン。何が瑕かは、俺が決める」



アンの紅の猫目が見開いた。まだ会場は静まり返り、ミカエルの声を拾っているようだった。



「アンがこの会場の誰より綺麗だ。俺が言うから、そうなんだよ」