アンがこれ以上騒ぎに巻き込まれないように、ホールを出ようとすると、ミカエルがリリアを一瞥してフッと笑った。


「傷物令嬢はお前だろ?」

「な」


ミカエルが笑みを絶やさずに、碧眼に暗い光を灯した嘲笑をリリアにプレゼントする。


「人を蔑む言葉を発する口、人を下げて自分を上げようとする愚かな頭、それに愉悦する下衆な顔、


全部傷物だな」


美よりも美しいと評価されるリリアの顔を見て、ミカエルが冷笑する。


「お前、生まれてから今までに一回でも鏡を見たことあるか?」


寒くてゾクゾクした背筋で固まったリリアを、ミカエルは一息で地獄に突き落とした。


「へ?」

「鏡見てから声かけろ!」