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床に散らばったトランプの上で数枚握りしめて、無防備に眠っている澪奈を起こさぬよう、トランプをかき集める。

…ったく、こんなに散らかして…。

そろそろなんか晩御飯でも作るか。こいつも起きるだろうし。

トランプを回収し終わり、よいしょっ、と立ち上がったその時だ。

ーーピンポン…。

また、家のチャイムが鳴った。

さっき帰ったばっかなのにまた来たのか?

この家のチャイムを押すのは、大抵が雨なのでてっきり雨がまた来たと思って、玄関に向かう。

「はいはい、忘れ物かー?」

ガチャっ、とドアノブを捻り、ドアを開ける。

「あたし、2階に住んでる者なんすけど…、最近バタバタうるさい気がするんで、もう少し静かにしてもらえませんかね」

ドアの向こうに立っていたその人は鉛筆片手に赤いはんてんを着込んで気だるそうにこちらを見ていた。

「…」

2階…。

その言葉を聞いて、ハッとする。

うわ…!!

こいつがいつも威嚇するみたいに床ぶっ叩いてくる人か…。

今まで何度も天井から床をドンドン!されたことを思い出す。