「俺になんかあったら、澪奈の面倒見てあげて欲しいんだよ」

「…‪っ、ちょっと待って下さい!”‬なんか‪”‬って、なんですか」

「俺は今、傍から見れば総長からの指示を無視して庇っている、という状態だ。そうなると俺は立派な裏切り者だ。組織に消される可能性もゼロじゃない」

「…」

両者神妙な面持ちで見つめ合う中、先に表情を崩し、またも声を荒らげたのは雨だった。

「あぁああああああああああ!もう……!だから暴走族なんて早いうちに抜けときましょうよ!って言ったんです、僕は!!」

手すりをガンガンと揺すったり叩いたりしながら、暴れている。

「はいはい、ありがとな」

苦笑いしながら荒れ狂う雨の頭に手を乗せた。

「柚季さんが…っ、けっ、消されるなんて…!僕耐えられません!」

もう雨はすっかり情緒がおかしくなってしまっているようだ。心配してくれるのは有難いが、義理堅い奴だ…。

たった1回絡まれてるとこを助けてやっただけなのに。

「‪”‬もしも‪”‬の話だ、って言ってんだろ?」

「澪奈ちゃんの面倒見るのはいいですけどー…、そんな‪”‬もしも‪”‬やだですーーー…」

「はいはい」

それから雨はわーわーと喚き散らし、うるさかったが夕方頃、塾があるとかですみやかに家に帰っていった。