「雨…っ!お前ちょっと声でけぇよ……っ、あと!暴走族はこの世に生きる男の憧れなんだからな!雨には分からないだろうが」

「気持ちは分かります!でも僕は…っ、柚季さんが大好きだから!柚季さんには、真っ当な道を歩いていってほし​────」

その時。
雨が口をポカン、としながら俺の背後を見た。まるで俺の後ろに何か(・・)がいるかのように。

「ん?」

何、か……?

ゆっくり首をひねり、振り返ってみる。

そこには……

「ゆずきぃー、この人だれー」

澪奈が目を擦りながらぺたぺたこっちに歩いてきていた。どうやら俺らの話し声に起きてしまったらしい。

「はっ…、え?柚季さん……、まさか学校をサボって女を家に連れ込んでいるんですか?」

「いや!?違うけど!?そんな訳ねぇだろ!?」

「だってこんな朝っぱらから男女が、ひとつ屋根の下、って!それはもう……っ、あれじゃないですか!あれ!」

「いやいやいや!違ぇって!お前何想像してんだよ!」

やべぇ……。完全に誤解された。

「だれっ?」

こちらに来た澪奈が猫がすり寄ってくるみたいに俺の腕と自分の腕を絡ませスリスリとしてきた。

そして何も知らない澪奈は俺の顔を見上げて純粋過ぎる質問をする。

「友達っ?」