「俺も頼まれたんだよ。総長に」

「は?どういう事だよ」

すると総長がギロリ、と鋭い目つきをこちらに向けた。

「……柚季。理音。先に殺した方が幹部にしてやる」

先に、って…。

戸惑っている間に、理音が嬉しそうに声を上げた。

「例の女。あの月影の血が入ってるんだって?そりゃ、俺の血が滾るなぁ〜」

クックッ…、と不気味な笑い声を響かせる理音。

ひとしきり笑い終えたのか、今度は背筋がゾッと疼くようなどこまでの冷たい目をして俺の耳元に口を寄せた。鼓膜に冷淡で飄々とした声が届く。

「綾瀬澪奈を殺すのは俺だ​───────」

気味の悪い吐息に神経が逆なでされる。

そして用が済んだと言わんばかりに、理音は「せいぜい頑張ろう。お互いに」と言ってコツンコツン、と足音を響かせ部屋を出ていってしまった。

……理音は、過去少年院にいたこともあると聞いたことがある。

なんでこんな競わせるようなことを…。

俺がもう澪奈のこと殺す気ないって分かってのことか…?

真意を知りたくて、チラ、と総長を見てみるが、いつの間にかタバコを吸っている所だった。もくもくと煙の匂いがこちらにまで漂ってくる。

その姿からも総長の考えていることは掴めそうになかった。

でも多分…、

痺れを切らした、ということなのだろう。