低く冷徹なトーンで放たれる怒りが混ざったような声に静かに目をつぶった。

そして何度目かの謝罪をまた吐き出すほかなかった。

「すみま​───」

「まぁいい。入れ」

俺の声を遮った総長がため息混じりにそう言うとすぐに背後の扉がガチャ、と開いた。

振り向き、目をやるとコツンコツン、と靴音を響かせ誰かがこちらに歩いてきていた。

「…っ、」

つい、息を飲む。

「理音…」

「久しぶり。西島。」

俺の隣に並ぶようにして立ったのは女みたいな長い髪を後ろに1括りにして結ぶ長身の男。

深澤理音(ふかざわ りおん)だった。

切れ長の青い瞳が俺を気だるげに見つめ、何かを企んでいるかのように不気味に微笑んでいる。

奴とは数回顔を合わせたことがあるだけの間柄。ダークナイトの一員であるが滅多に顔を出さないレアキャラ的存在と俺は認識していた。

なんでこいつが突然…。

疑問に思い、総長を見るとどこか満足気な、勝ち誇ったような表情をしていた。隣で理音が涼し気な顔をして口を開く。

「西島、これは勝負だ」

「勝負?」

眉をひそめ尋ねると、理音はブカブカのジージャンのポケットに手を突っ込みながら顎でツン、と総長を指した。それはどこまでも自信に満ち溢れているような佇まいに見える。