それはよくよく考えれば、楽しい思い出と共に、悲しい思い出まで増幅させてしまうような場所なのかもしれない。

そう思ったら…

「あ、やっぱ別のとこ行こうか」

仕掛けた提案を押し込め、別の行き先に頭を巡らさせた。

「私ここ行きたいっ!」

しかし澪奈は俺が手にしかけたチケットを覗いで指さした。観覧車やメリーゴーランドが描かれている華やかなチケットだ。

「え…でも…、いいのか?」

「うん!ゆずきと一緒に行ってみたい」

俺なりに気を使ったつもりだったが、澪奈はチケットを手に取り、微笑んだ。

もしかしたら澪奈は…、いつまでも過去を引きずってメソメソする奴じゃないのかもしれない。

俺が思っていた以上に今の澪奈は楽しそうで、いつの間にか心配には及ばないほど明るく元気を取り戻していた。

「じゃあ行くか」

「うんっ!楽しみだねっ」

「だな」

***

「女の居場所は掴めたのか」

澪奈と遊園地に行く約束をした数日後。
総長に呼び出され、俺はまた倉庫に出向いていた。

威圧感漂うこの空間で、俺は膝まづき、また総長に平然と嘘をつく。

「すみません。まだ……」

「どれだけ俺を怒らせれば気が済む?」