その名(山田太郎)で呼ぶことは誰であろうと許さない、って施設にいた頃からこだわってたっけ?

「ん?太郎くんなの??」

俺の一言に混乱している様子の澪奈にティアラは囁くような優しい口調で言った。

「いいえ。違うわ。あれはデタラメよ。耳を傾けてはダメ。あたしは、ティ・ア・ラ。」

「うん!わかった!ティアラちゃんっ!」

「んきゃー!かわいいっ!」

ぬいぐるみみたいに澪奈を抱きしめるティアラ。昔から可愛いものに目は無いが、こうもベタベタされるとさすがに澪奈が可哀想だ。

「おい、離れろ」

「やっだぁー!離れない。んぎゅー!」

「てへへっ…、ぎゅー。」

何やってんだか。

まぁ、澪奈も嫌がる素振りはないし、いいか。

「ティアラちゃんいい匂いするねっ」

「あっ、分かる!?これはねー、‪”‬スペシャル・ロイヤル・クラウン・ウルトラ・ハッピー・ミント・シトラス・ハイパー・フルパワー・キラキラ・バニラ・シャボン‪”‬の香りだよっ」

鼻がひん曲がりそうな香水使ってんな…。

「へぇーそうなんだ!素敵っ!」

「んきゃー!ありがとぉっ!」

「ティアラちゃんは柚季と同じ学校行ってるのー?」