彼女の周囲と、自分の周囲に張られた結界。その結界は他の女鬼が張る盾のようなものではなかった。
円蓋状の、全方面から守る結界。本来の月鬼が持ち得る力。
燦人は舞台の上に目をやり、眩しそうに細める。
そこには、月がいた。
満月を思わせる薄黄色の目。月光を思わせる白銀の髪。そして、鬼の証である二本の角。
下弦の月の下。かつて、まさに月だと言わしめた月鬼本来の姿となった香夜がそこにいた。
「……美しい」
無意識に呟いたであろう炯の声が聞こえる。
燦人は視線を舞台に向けたまま心の中で同意した。
(ああそうだ。美しく可愛い私の月鬼)
八年前に感じた時よりさらに強い力を持ってそこにある。
強さ故に惹かれるのか。美しさ故に惹かれるのか。もはや理由など分からない。
だが、八年前から彼女のこの気配に惹かれていたのだ。
この思いはやはり変わりないのだと、確信する。
(ただ、願わくば……彼女の心を開放するのは、私の役目でありたかったな)
香夜の近くで倒れている彼女の養母に一瞬視線をやり、そんなことを思った。
だがおそらく初めての変転で体が付いて行かなかったのだろう。やがて香夜は力尽きたのか普段の姿へと戻る。
倒れそうになる彼女を受け止めるため、一週間前と同じように素早く舞台へと上がった。
「燦人様……」
受け止めた香夜は安心したように微笑むと、そのまま瞼を閉じてしまう。
閉じていた力を突然解放したのだ。疲れてしまったのだろう。
燦人は香夜を抱き上げ、先ほどの結界で弾かれてしまっていた柏に視線を移す。
円蓋状の、全方面から守る結界。本来の月鬼が持ち得る力。
燦人は舞台の上に目をやり、眩しそうに細める。
そこには、月がいた。
満月を思わせる薄黄色の目。月光を思わせる白銀の髪。そして、鬼の証である二本の角。
下弦の月の下。かつて、まさに月だと言わしめた月鬼本来の姿となった香夜がそこにいた。
「……美しい」
無意識に呟いたであろう炯の声が聞こえる。
燦人は視線を舞台に向けたまま心の中で同意した。
(ああそうだ。美しく可愛い私の月鬼)
八年前に感じた時よりさらに強い力を持ってそこにある。
強さ故に惹かれるのか。美しさ故に惹かれるのか。もはや理由など分からない。
だが、八年前から彼女のこの気配に惹かれていたのだ。
この思いはやはり変わりないのだと、確信する。
(ただ、願わくば……彼女の心を開放するのは、私の役目でありたかったな)
香夜の近くで倒れている彼女の養母に一瞬視線をやり、そんなことを思った。
だがおそらく初めての変転で体が付いて行かなかったのだろう。やがて香夜は力尽きたのか普段の姿へと戻る。
倒れそうになる彼女を受け止めるため、一週間前と同じように素早く舞台へと上がった。
「燦人様……」
受け止めた香夜は安心したように微笑むと、そのまま瞼を閉じてしまう。
閉じていた力を突然解放したのだ。疲れてしまったのだろう。
燦人は香夜を抱き上げ、先ほどの結界で弾かれてしまっていた柏に視線を移す。