「燦人様、邪魔をしないでいただきたい!」

 そう叫んだ柏は、炎をあろうことか自分に向けてきた。次期当主である自分に、だ。
 遠縁である柏との力の差は歴然。敵うわけがないというのに。

(だが、いいだろう)

 燦人は込み上げてくる怒りに身を任せて思った。

(私の婚約者を害そうとした罪、その身で(あがな)わせてやる)

 暴力的な感情が沸き上がる。
 求めて焦がれて、やっと会えた存在。可愛くて大事な婚約者。
 彼女を傷つける者は、誰であろうと容赦はしない。
 そんな思いのまま、全力で叩き潰すために変転しようとしたときだった。

「嫌……駄目よ」

 微かな声。だが燦人の耳にははっきり聞こえた愛しい人の声。
 その彼女が立ち上がり、閉ざしていたはずの力を放つ。
 瞬間、キィンと澄んだ音がした。