「あっ、あのっ! その……やはり疑問なのです。一体私のどこが良くて選んでくださったのか……。美しいわけでもないし、力だってないですし……」
「ずっと求めていたと言っただろう? それに、貴女に力はあるよ」
「え?」

 前半の言葉は予測出来たもの。だが、後半は予測どころか思ってもいないことだった。

「今は閉ざしてしまっている様子だけれど、貴女には力がある。八年前に感じた力ある気配は、確かに貴女のものだ」
「え? え?」

 理解出来ず戸惑う香夜に、燦人はゆっくり八年前のことを話してくれる。

 遠くても感じた気配。燦人と当主しか感じ取れなかったが、確かに力があったという話。
 一通り聞いて、それでも信じられないでいる香夜に燦人は重ねるように言葉を加えた。

「先程も言ったが、今は閉ざしているだけだ。開いて力が扱えるように私も手助けするから、どうか否定しないでくれ」

 手を取り、優しく微笑まれる。
 自分の手を包む燦人の手は温かく、香夜の心を少しずつ溶かしていった。
 嘘を言っているとは思えない。例え嘘だったとしても、そんなことをして燦人に利があるとも思えない。

 だが、それを信じるとなると……。

「でも、それが本当だとしたら……私はやはり両親を見捨てた穢れた娘ということに……っ」

 ずっと否定し続け、でも心のどこかでその通りかもしれないと思っていた事実。
 母が、自分だけは助けようと結界を張ってくれたのだと思った。
 だが、母の力は子供だった自分の全身ですら守れるほどのものではなく、香夜に傷一つないなどということはあり得なかったのだ。
 だからその点がずっと疑問だった。

 それが、燦人の話を真実とすると辻褄が合う。聞くところによると、おそらく時期も同じ頃だ。