「あなたはこうは思いませんか? 選ばれるのが自分ではないのなら、いっそ誰も選ばれずにいてくれた方がいい、と……」
「……」
「あのような弱い娘が選ばれるくらいなら、月鬼の一族から花嫁を出さなくてもいいのではないか、と……」

 正直、思っていた。
 だから鈴華は、男を信用ならないと思いながらも話に聞き入ってしまう。

「そして私のように火鬼の一族のほとんどが、月鬼から嫁を取りたくないと思っている」
「……何が、言いたいのかしら?」

 だから、男の要望を聞き出そうとしてしまった。
 そんな鈴華に男は比較的優し気に微笑み、望みを口にする。

「一部とはいえ利害が一致しているのなら……手を組みませんか?」

 それこそ、鬼と言われるに相応しい笑みを浮かべて。