「あなた、いかがでしょうか?」
「うむ」

 こうなると、鈴華を外に出したくない父の言葉は決まっている。

「燦人どのが決めることだ、こちらが何を言っても無駄だろう。それにあの目障りで使えない娘を連れ出してくれるというなら願ったりではないか。この里から花嫁を出したという体裁も保てる。一石二鳥だろう」

 そう言ってその言葉を里の方針として決定してしまった。
 鈴華のようにまだ納得しきれていない者もいたが、長が決めてしまったのなら文句は言えない。

 そして方針が決まってから数日。
 今では納得しきれていなかった者達も、里で一番の美しさと力を持つ鈴華を手放さなくて済んだのだ。と喜ばしいことのように語っている。

 悔しい、腹立たしい。
 鈴華はまたドンッと幹を叩き、恨めしい思いを吐き出した。

「あんな子、嫁に出したところで突き返されるのが落ちよ」

 そうだ。たとえ燦人が選んだとしても、日宮の家の者が認めるかはまた別の話だろう。
 そう考え、心の平穏を保とうとしたときだった。

「ええ、あなたのおっしゃる通りです」
「っ!?」