北口が近くなってきた時、美桜が西側を指さしながら言った。
大型ショッピングモールなだけあって東西南北で出入り口が分かれているため、行きたい店が決まっているのであればその店に近い入口から入るのがベストだ。
まあ、何度も来たことがないとどこに何があるとかはわからないだろうけれど小さい頃からよく来ているのできっとみんな映画館の場所も頭に完璧に入っているんだろう。
「そうだな。西口から入るか」
俺が返事をする前に美桜の隣にいた西神が言った。
俺が言いたかったのに。
なんて不満に思いながらも彼の言葉に黙って頷き、西口へと向かった。
エスカレーターを上って3階の一番端にある映画館へ着くと、キャラメルポップコーンの甘い香りが鼻を掠めた。
映画館の薄暗い雰囲気、ポップコーンの香り、壁に飾られている上映予定のポスター、映画館に足を運ばないと味わうことのできないこの雰囲気が俺はとても気に入っていて好きだった。