きっと美桜は自分からは言い出さないだろう、と無意識にそう思っていたからだ。

何故そう思ったのかは俺にもわからない。
でも、そうすることが当たり前だったかのように口が勝手に動いていた。

美桜といると、時々そのような不思議な感覚に陥ることがある。

どうしてなのかはまったくわからない。


「あ、それ知ってる。片想いしてる相手に好きな人がいて主人公の女の子には秘密あるってやつだよね」

「よく知ってるな」


こういう感動ものに弱い俺としては好きな人の前で泣いてしまわないように気をつけないといけないと思っている。


「だって、SNSでめちゃくちゃ流れてくるんだもん」

「ふーん。さすが暇さえあればSNS見てるやつは違うな」

「うるさいなあ。あんたと違って情報通なのよ」


そう言いながら俺の肩をパシンと叩く。


「いてぇな」


なんて、口では言っているけれど俺の耳の神経は後ろを歩いている二人の方へと向いてる。