この恋に勝算はあまりないかもしれないけれど、俺は美桜じゃないとダメなんだ。


「ありがとう。櫂も制服とはまた雰囲気が違ってかっこいいよ」


柔らかく目を細めて言った彼女は春の陽だまりのようでドッドッドッと鼓動が早鐘を打ち始める。


「なんか照れるな。けど、嬉しい」


思わず、ニヤケてしまいそうになって口元を手の甲で隠して、うるさく高鳴る鼓動を必死に抑え、平然を装う。

好きな人からの“かっこいい”という言葉の破壊力が凄まじいということを俺は今日初めて知った。



「よし、じゃあ映画観くか」


13時になる15分前に四人全員が揃った。

美桜が来てから5分後くらいに西神がやって来て、そのあとすぐに佑香が小走りでこちらまでやってきた。

だから、俺が美桜と二人きりで過ごせた時間はものすごく少なかった。


時間にすれば5分。

でも俺にとってはその5分ですら尋常じゃないくらいドキドキして特別な時間に思えたのだ。