早く時間が経ってほしいような、そうじゃないようなもどかしい気持ちになる。
ああ、きっとこれが恋をしているということなんだろう。
美桜の服装ばっかり気にしていたけれど、俺の服装は変じゃないだろうか。
ふと、そう思って駅前の店のショーウィンドウに映る自分の姿を確認する。
白いシャツの上から黒のカーディガンを羽織って、淡い色のジーパンに白のスニーカー。
たぶん変ではないと思うけれど、妙にソワソワして落ち着かないのはもうすぐ君に会えるからだ。
一応、スマホに映っている自分の髪の毛を整えてみたり、今日観る予定の映画のあらすじなんかをチェックしてみる。
いつもならこんなにも入念に準備したりはしない。
でも、好きな子に会うんだからこれくらいは仕方ないと許してほしい。
「あれ、櫂?ずいぶん早いね」
可愛らしい声が耳に届いてそちらに視線を向けると、美桜が軽く手を振って天使のような笑顔を浮かべていた。