「うわ、お前。ノックくらいしろよ」
いつの間にか俺の部屋に入ってきて仁王立ちをしていたのは幼馴染の佑香だった。
「何回もしたのにあんたから反応ないからでしょ」
眉間にシワを寄せて、見るからに不機嫌そうな表情をしている。
「まじ?」
全然、気づかなかった。
頭の中が美桜のことでいっぱいになっていたからだ。
「まじだって。で、何を頑張るの?」
「まあ、それは色々だな」
美桜のことは何となく言いたくない。
もし、佑香にバレて俺の家族に言いふらされても困る。
うちの親というか主に母親は俺に彼女ができることを妙に楽しみにしているのか頻繁に「彼女いないの?」とか挙句の果てには「佑香ちゃんとお似合いよ」と余計なお節介を焼いてくる。
俺だって好きな人くらいいるから心配してくれなくてもいいのに。
「色々ってなに?」
「教えねえよ」
そう言いながら美桜に返信するために文字を打つ。
なんて返信しようかな。