いつか無責任だと思われてもいい。罵られても構わない。
“今”彼の背中を押すことができるのはこのわたししかいないのだから。
「まだ挑戦もしてないのにもう弱気になってんの?櫂の写真に対する思いを先生とご両親に全部ぶつけてからでも遅くないんじゃない?わたしは応援してるから」
「美桜……」
にっこりと白い歯を見せると、不安げな瞳と目が合った。
まるで太陽が重たい雲で隠されているかのように光の見えないひどく暗い表情だ。
見ていられなくなって、思わず目を逸らした。
ずきん、と胸が痛む。
わたしが怖気づいてどうするの。
しっかりしなきゃダメだ。
櫂は今きっと不安で仕方なくて誰かが背中を押してあげなきゃいけない。
ゆっくりと一度瞬きをしてから彼に視線を向けながら「色々偉そうに言っちゃったけどさー」と言葉を続けた。
「これだけは胸を張って言える。わたしは櫂の撮る写真がすごく好きだよ。未来の自分が後悔しないように生きて」
色々と言ったけど結局わたしが伝えたかったのはこれだ。
すると、彼の不安げな瞳が大きく見開いて、一粒の透明な雫がぽろりと乾いた地面に落っこちた。
どうか、未来の自分が人生を振り返った時に君が後悔することがないように生きていてほしい。
その時にはもうわたしが隣にいないとしても。
数年経って、君の夢が叶っていないとしてもそれでもいいから、今ここで諦めないでほしい。