でも、そんなわたしでも君のことだけはどうしても諦めきれなかった。

手放せなかった。いや、手放したくなかった。
自分の人生を捧げたとても、君の未来を諦めたくなかったんだ。


先程から一言も言葉を発さない彼の方をちらりと盗み見る。

その瞳は迷いと不安で満ちており、小さく揺れていた。

そんな瞳をどうにかしたくて必死に今自分が伝えられるだけの想いを言葉に詰め込むように声にする。


「人の夢を笑う人はきっと素直に自分の夢を追い続けられる人が羨ましいんだよ。それに人の努力を笑うような人は一生夢なんて叶えられない」


人は簡単に嫉妬心を抱くものだ。
それはどれだけ善良な人間でも持っている心だと思う。

でも、別にそれはおかしいことじゃない。

ただ、嫉妬心を抱いて人の夢や努力を笑うようなやつには自分の思い通りにはいつまで経っても生きられない。

焦っても、羨ましくても、努力し続けた人だけが思い描いた未来を生きられるのだ。


「……俺は才能もないしさ、不安なんだよ」


やっと口を開いた彼から出た言葉は、とても弱々しいものだった。

正直、何の夢もないわたしには彼の不安の本質は理解できないし、わからない感情だ。

それでもわたしは言わなきゃいけない。