この線香花火と共に、俺の夏も終わる。

そんなことを思っていると隣から「あっ」という声が聞えてきた。

彼女の視線の先を見る。
すると、散りゆく花のように段々と火花が小さくなっていき、ぽたりと火玉が地面へと落ちた。


「俺の勝ちじゃん」


俺の線香花火はまだ微かに火花を散らしている。


「えー、勝てると思ったのに」


残念そうに肩の力を抜いて空を見上げた美桜。

その横顔は暗くてよく見えなかったけれど、何故か今にも泣き出しそうなほど悲痛に見えた。

その表情に心臓が握りつぶされるみたいに苦しくなる。

どうして君はたまにそんな儚げな顔をするのだろう。

俺は君に春の陽だまりのようにあたたかな笑顔をこれからもずっと浮かべて生きていってほしい。

君にそんな顔をさせるすべてのものから俺が守るから。
だから、これからも俺のそばにいてよ。


なんて伝えることのできない気持ちを今日もそっと胸の中に隠した。


「はい。美桜が罰ゲームな。俺の好きなところ一つ言ってみ」


俺がそう言うと、顎に手を当てて考え込むように黙ってしまった美桜。