「じゃあ、それでいいよ。わたしが勝つし」
「そんなのわかんねえだろ!はい、次これな」
そう言いながら次の花火を渡す。
絶対に勝って、好きなところを聞いてやる。
心の中で決意を固め、美桜を見た。
楽し気に笑いながら隣にいる彼女が持っている花火がシューッと音を鳴らし、鮮やかな光が夜を照らす。
「みてー!ハート!」
無邪気に声を上げて、持っている花火をハートの形に動かす。
すると、花火から放たれている色鮮やかな光がハート型へと変わる。
俺はポケットからスマホを取り出し、カメラを起動させると思わずカシャとシャッターボタンを押した。
「え、なに?」
突然のことにきょとんとした表情で驚いている美桜。
「いや、写真で撮ったらもっとハートに見えるかなって」
そう言いながら先程撮ったばかりの写真を美桜に見せる。
そこには光の線がくっきりとしたハート型になってその先で美桜が屈託のない笑みを浮かべている姿が映っていた。
夏の思い出って感じで我ながら、いい写真だ。
そうか。俺はずっと忘れていた。
自分がどうして写真を撮ることが好きだったのか。