俺はいつか家に帰ったら君が「おかえり」と笑って出迎えてくれる幸せに溢れた未来を描いているよ。

まあ、まず恋人になるところから始めないとダメなんだけど。

花火の前でちょこん、と座ってどれにするか悩んでいる彼女を見ていると心がじんわりと熱くなってくる。


―――愛おしい。


その言葉はきっとこういう感情のことを言うんだろうな。

心の底からふつふつと優しくあたたかい感情が溢れてたまらない。

衝動的に彼女を抱きしめたくなるのを必死に堪える。


いつか、何の遠慮もせずに彼女を抱きしめる権利がもらえるように頑張らなくてはいけない。


「ねえ!最初はこの花火にしよ!」


花が咲いたような可愛らしい笑顔を浮かべた美桜が「はい」と俺に一本の花火を差し出す。


「さんきゅ」


点火棒のレバーを何度かカチカチッと押すと、先端にほんのりと小さな炎が灯る。

ゆらゆらを風の抵抗を受けながら揺らめく炎はとても綺麗だった。


「わたしから始めまーす」


その言葉通り、美桜は花火の火薬部分を炎に近づけた。