河原は形の様々な石ころが転がっていて歩きづらいのに加えて今は夜だから月明かりくらいしか光がない。
気を抜くと転びそうだ。
だから、転ばないように意識を足元集中させながら川まで辿り着いた。
たったそれだけのことなのに、むわんとした気温は容赦がないようで額からたらりと汗が伝う。
汗を腕で拭いながらふぅ、と短く息を吐いた。
それにしても暑い夜だな。
今日も美桜は可愛かった。
久しぶりに顔が見れたからかいつもの百倍可愛く見えるからずっと心臓がうるさい。
なんてことを考えながら水色のバケツに半分ほど川の水を入れて踵を返す。
「ただいま」
まるで家に帰ってきたかのようにそんなセリフが出てきてしまった。
案の定、美桜はきょとんとしてからすぐに「……おかえり!どれからする?」と袋から出して並べられている花火へと視線を落とした。
その横に汲んできたばかりのバケツをこぼさないようにそっと置いた。
なんか今の同棲しているカップルみたいだったな、なんて言ったら君は引くかな?