いや、俺相手に照れるわけないだろ。


「手持ち花火なんてよく家にあったなー」

「ちょうどスーパーで見かけてついつい買っちゃった」


なんて、むんむんと蒸し暑い夜の中でふんわりと楽しそうに微笑む美桜にまたもや心を掴まれた。

ああ、君と過ごす夏の日はこんなにも楽しく感じるんだな。

いつもならうるさく思う虫の鳴き声も、汗でべっとりと額にくっついてしまう前髪も、全部が気にならずに楽しさへと変わっていく。


恋って、こんな気持ちになるなんて知らなかった。

君と出会ってから俺は今まで知らなかった感情をたくさん知ることができているよ。


「ほら、ついたよ」


5分程歩いて辿り着いたのは近所の河原だった。

こんなところ、来たことがあるはずがないのにどうしてだか俺は懐かしい気持ちになってたまらなかった。

そんな気持ちを抱えながらも階段で河原へと降りて、川より少しだけ離れたところで持ってきた花火とバケツを置いた。


「バケツに水いれてくるわ」

「ありがとう。じゃあ、わたしは花火の袋開けて待ってるね」

「おう」