ついつい、ニヤケそうになるのを我慢した俺は偉い。
「これ持つわ」
家の鍵を閉めている美桜が片手で持っている水色のバケツと袋に入っている花火などを彼女の手から奪う。
何だか懐かしい気持ちになりながら。
「ありがと。よし、行こっか」
「どこでやんの?」
ゴミや騒音の関係から、年々手持ち花火ができる場所が少なくなってきているのに一体どこでやるつもりなんだろう。
「まあまあ!とっておきのところがあるの」
ピンと人差し指を立て、右目を閉じてウィンクをして笑う美桜。
その無邪気な姿にドクンドクンと鼓動が高鳴る。
可愛い、なんて本音がこぼれおちないように必死に口を引き結んだ。
「それは楽しみだな」
「うん、ついてきて」
俺の少し前を歩く彼女をみて勝手に緩む頬を必死に抑えながらその隣に並んだ。
こうして二人で会えるなんて夢みたいだ。
「今日は無理言ってごめん。どうしても二人で会いたくて」
俺が謝罪するとなぜだか美桜は一瞬目を見開いて驚いたあとほんのりと頬を赤らめて「……全然大丈夫」と言った。
ちょっと照れてる……?