急に黙り込んだ佑香が気になってそちらに視線を向ける。


「ううん。なんでもない!このアップルパイもーらい!」


少しだけ影を落としたかのように見えたその表情は俺の気のせいだったのか横でアップルパイを頬張っている彼女の表情はいつも通りだった。


「おい、俺のやつなんだけど」

「早く食べないのが悪い」


悪びれる様子もなく、さらりと言い放つ。

やっぱり、俺の気のせいだったか。


「食べたんなら早く帰れよ」

「わかってますー!あんたに言われなくてもわたしは忙しいから長居なんてしないし!」


あっという間に食べ終わったアップルパイ。

包んであった紙ナプキンをゴミ箱に捨て「じゃあ、お邪魔しました」と視線を落としたまま、早々に部屋を出て行った。

なんだったんだ……?と思いながら、もう一度ベッドに寝転んで充電コードに挿しっぱなしだったスマホからコードを引き抜いた。

画面をタップしてメッセージアプリを開く。


「一応、佑香にお礼言うか」


心配してきてくれたみたいだったし。