医者にはあれだけの怪我を負って後遺症がないのは奇跡です、と信じられないとでも言いたそうな表情で言われたのに今更になって後遺症が出てきたっていうのか?
「最近の櫂、なんだか変だよ」
「気のせいだろ。考えてみたら浜田と一緒にしたのかも」
浜田とは仲が良いけれど、二人で花火をするような仲ではないことくらい佑香にはバレているだろう。
だけど、自分でもそう思い込まないとおかしくなってしまいそうな気がしたのだ。
思い出せそうで思い出せない大切な何か。
それが何だったのかはわからない。
だけど、自分が今持っているすべてをその人に捧げても構わないと本気でそう思うほど俺はその人を大切にしていたような気がする。
今の俺が美桜に対してそう思うように、ふと思い出す記憶のようなものの中で俺はその人を大切に想っているのだ。
果たしてこれが本当に俺の思い出せない記憶なのかどうかは定かではないけれど。
「ふーん。今年はしないの?」
疑問に思うことはあったのに佑香はそれを俺に聞いてはこなかった。きっと、彼女なりの優しさなのだと思う。
「予定はないな」
「じゃあ……」
「ん?」