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「ねぇ、お母様。それで呪われ姫は一体どうやって呪いを解いたの?」

 トロンとした金色の目を擦りあくびをした可愛い娘と既に夢の中に落ちた愛息子を寝かしつけながら、ベロニカはクスッと笑う。

「ふふっ、呪いの解き方なんて古今東西"真実の愛"と相場が決まっているのですよ」

 そう答えたベロニカは自身の指に留まる17の誕生日に貰った伯爵お手製の銀細工の指輪を幸せそうに撫でる。

『呪いなんて吹き飛ばすくらい、誰よりも幸せになってください』

 そう言ってくれた伯爵は呪われていようがいまいが、今も変わらずに自分の事を愛してくれる。

「呪われ姫……幸せ、なれた?」

 眠気に抗う娘をベロニカはトントンと慣れた手つきで寝かしつける。

「ええ、勿論」

 とベロニカが答えた頃には彼女の金色の目もすっかり閉じられスヤスヤと寝息を立てていた。
 そっと部屋を後にして、リビングに降りれば、

「寝かしつけお疲れ様」

 ベロニカの大好きな黒曜石の瞳が笑う。
 ぱぁーと顔を明るくしたベロニカは伯爵に抱きつくと、

「伯爵もお疲れ様です! 夕食のお片付けありがとうございました」

 大好きな人の一番近くにいられることに感謝しつつ、心から幸せそうに笑う。
 これはかつて呪われ姫と暗殺者だった2人の、日常を描く物語……なのかもしれない。


☆あとがき
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
皆さまのおかげでかきあげる事ができました♡
この2人のやり取りは書いていてすごく楽しかったです!伯爵、イチカ作品史上一番カッコいいヒーローかもしれない(*´∀`)♪
こちらの続編にあたる……といってもすでに完結済みなんですけど、伯爵の妹の話もぜひよろしくお願いします!
『結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜』