「……守人さん」
「ん?」
自分で何を言いたかったのかは分からない。だけど名前を呼んでしまった――そんな時。
守人さんの無線が、反応した。
『陽の丘警察本部より緊急伝達』
その瞬間。守人さんの顔から笑顔が消え、無線の声に、全ての神経が集中する。
『陽の丘〇〇丁目、××道路にて多重事故発生。合計六台玉突き、マル被多数、程度不明。道路封鎖のため渋滞発生。陽の丘隊、機装隊……――計十五隊。*緊配発令』
「……」
守人さんは何も言わない。代わりに、さっき被った帽子をキュッと、目深に被り直した。
(*緊配・きんぱい……緊急配備のこと)