「勇運は、乗り越えたって事だね。やっと……」

「すみません、守人さん……。私、勇運くんと守人さんのお父さんの事を聞いてしまって」

「そっか。でも謝らないで。隠す事でもないでしょ?」



そして守人さんは、再びニコリと笑う。

それは、いつも守人さんが見せるニコニコの笑顔だった。



「勇運は、まだ中学生だったから。父さんの死を、受け入れられなかったんだろうね。長い間、苦労していたから……その悩みが晴れたなら、僕も自分の事のように嬉しいよ」



言いながら、守人さんは帽子を外した。

どうやら、さっき玄関で帽子を脱いで被せた時、被せ方が悪かったらしい。「髪を全部入れないといけないから難しいんだよね」と、守人さんは髪を真ん中へ寄せる。


その時、なんとなく。

本当になんとなく、思ったことを質問してみた。