「……にーちゃん、喉乾いちゃった」

「じゃあ、向こう行くか」



勇運くんは、夏海と奥の部屋へ戻っていく。私は残った守人さんに声をかけ、中へ促すのだけど……



「守人さんも、どうぞ」

「あ……、うん」



「……」



守人さんを見つめる人物――それは柴さん。

勇運くんと夏海が消えた奥の部屋を見る“守人さん”の様子が気になったらしく……



「一葉」



ピリッ、と。

この場の空気を切り裂くような。そんな鋭い声色で、芝さんは守人さんの名前を呼んだ。



「ここからは私一人で大丈夫です。あなたは外で待っていてください」

「え……そんなわけにはいきません。僕も残って、」



その時。守人さんの言葉を“わざと”遮るように。

柴さんは、再び名前を口にした。



「一葉、これは指示です。待機」

「! ……分かりました」