大好きな大学の講義も受けることができず、カフェOliveにも行けていない。ストーカーのせいで平穏な日常が奪われている。悔しさも込み上げ、美紅は布団を握り締めた。その時である。

家のチャイムが鳴り響き、美紅はストーカーではないかと身構え、肩をビクリと震わせる。美紅がドアを見つめていると、もう一度チャイムが鳴り、声が聞こえてきた。

「美紅、俺だ！羽柴陽介だ！ちょっとだけ話せないか？」

「陽介くん？」

美紅はゆっくりとドアへと向かう。だがその時、美紅はあることを思い出した。陽介に美紅は一度も自宅を教えたことはない。

「どうして、どうして私がこのマンションに住んでるって知ってるの？陽介くんに教えたこと、一度もないよね？」

恐怖が込み上げてくる。震えた声で美紅がそう問いかけると、陽介は言った。

「美紅さ、小川をマンションに呼んで遊んだことあっただろ？小川に聞いたんだよ。ずっと大学休んでて心配だったし」

「嘘！菫ちゃんは勝手に人の住所教えたりなんかしない！そんなことする人じゃない！あなたが、あなたが私のストーカーなんでしょ！？」