「ハアハア……」


あんなの反則だ。

今までだって散々ドキドキさせられてきたけど、あんな甘すぎる顔は心臓に悪い。

思わず、善くんを突き飛ばして逃げてきちゃったけど大丈夫だったかな……!?


ていうか、お昼寝できてないじゃん!

一回、戻った方がいいかな!?


そう思い、走ってきた道を戻って音楽室の扉を開けた。


「柚音ちゃん?」


教壇の段差に座ってスマホをいじっていた善くんがパッと弾けたようにわたしの方へ視線を向けた。


「さっきはごめんなさい」


いきなり突き飛ばしたからきっと善くんも驚いただろうし。


「いや、俺こそごめん。でもなんで戻ってきたの?普通戻ってこないじゃん?」


なんでってそんなの……。


「お、お昼寝……できてないなって思って……」


確かに飛び出したのにすぐ戻ってくるなんて変なやつだけど、せっかくの善くんのお昼寝タイムをわたしの身勝手な理由でなくすわけにはいかない。