毎回、ちゃんとお礼を言ってくれるから律儀だなと思う。


「柚音ちゃん、ここ米粒ついてる」


自分の口の端をトントンと叩きながら教えてくれる。


「え?あ、ごめん」


急いで米粒を取ろうと口元を触るけど、なかなか見当たらない。


「そっちじゃない、こっち」


なぜか善くんが椅子からお尻を浮かせて、その綺麗な顔がこちらに迫ってくる。
そして、自分の唇をわたしの唇の方へ近づけていく。

ま、待って……!

これは本当にキスされてしまうのでは!?


なんて思っていると、わたしの指を掴み米粒の方へ動かしてくれて簡単に取ることが出来た。


キスされるかもなんてまたしても思ってしまった自分を殴りたい。


だけど善くんの顔は全く遠のかず、むしろどんどん近くなっていき、ついにわたしはぎゅっと目を閉じた。