そんな帆香は、相当彼氏に惚れこんでいた。

 だから嘘でも噂を流されてしまうと、相手を憎みたくなるのも……分かる。

 帆香は実際、被害者だ。悪くない。

 ……本当にどうしようもないのは、帆香と距離を置いてしまっていた私だった。



 あの後帆香とはちゃんと仲直りをして、改めて連絡先も確認して、今度遊びに行く用事もできた。

 昔の……中学の頃の関係に戻れたんだなって実感は、まだない。

 けど結局、人と関わらない私に関わってくれるのは帆香くらいだから……突き放せやしなかった。そんな度胸が、私にはなかった。

 もちろん、静流だってそうだ。好きで好きでどうもできなくて、突き放せない。

 距離は取れても……心は距離を置けないもので。

 それでも静流と話をする勇気はなかったものだから、体育祭当日になっても距離は取ったままだった。

《只今より、四十万学園高等部体育祭を行います。――》

 開会式のアナウンスをどこか他人事のように流し聞きながら、私は一人木陰に居た。

 誰にもバレないような、ギリギリバレにくいところの木陰。