「だから、それは嫌だ。」

「サボり扱いを免れたいの。」

「それなら心配するな。もう手は打ってある。」

「はぁ?」

 打ってあるって……こいつ、一体何したんだか。

「何したの?」

「クラスの奴に頼んどいた。『香は急用ができて準備には行けないって教師に伝えといてくれ。』って。」

「なっ……! 何勝手な事してっ――」

「仕方ないだろ。」

 ビクッ、と肩が震えた。

 待って……何、今の静流の声。初めて聞く、ドスの効いたような声……。

 驚いて顔を上げると、静流と目が合う。

「……しず、る?」

 きっと、今出した声はか細いものだっただろう。もしかすると、声が出ていなかったかもしれない。

 ……だって、静流の目が……いつもと全然、違っていたから。

「香は、どうして俺がこんなにも不機嫌なのか分かるか?」

「……わかん、ない。」

「あの男……佐納って奴と関わってるから、って言ったら?」

 何も言えない。だってそうだもん。

 静流にはお見通しだった。そう分かれば、黙っている必要もない。