どうやら物分かりは良いらしい。いや、別の理由があるのかもしれないけど。

 何にせよ、このままではダメだろう。

 私の言葉を真に受けてくれたのは良いけど、嫌な道に進んでもらっては困る。

 だから佐納さんと話をしようと、立川さんにセッティングをしてもらったんだけど……困った事が出てきた。

「し、静流離して。私行かなきゃならないとこ、あるから。」

「嫌だ。最近香とくっつけてないから、こうしていたい。」

「……ち、力強くない?」

「気のせいだ。」

 き、気のせいじゃないでしょ……。

 絶対意識して力込めてるよね……。

 静流にバックハグされている状態から逃れられなくて、反抗してみる。

 でも勝てるはずなく、呆気なく丸め込まれてしまっている現状だ。

 困ったなぁ……私、これから用事あるってのに。

 事前に体育祭の準備を任されていたから、早くグラウンドに向かわなければならない。

 それなのに、離してくれない野郎が居るからどうにもできない。

「体育祭の仕事あるの。私、サボりたくないから離して。」