「そういうわけなので、失礼します。」

「待って……っ!」

 ……この人は、何でここまでしてくるんだろう。

 私を引き留めるように、私の制服の袖を掴んだ佐納さん。

 そのせいでどうもできず、足が止まってしまう。

「ごめん……しつこいのが、ダメだったんだよね? だったら僕、もうしつこくは来ないから……関わらないでとか、言わないで……っ、香ちゃん……。」

「…………それは、私が決める事です。」

 なんて残酷なんだろう。客観的に思いながら、彼の手を振り払って逃げた。

 はぁはぁと息が大きく乱れるほど走り、できるだけ佐納さんから距離を取った。

「……っ、痛い。」

 心臓が、鈍く痛む。

 やめて、と言いかけてしまった。佐納さんの言葉は、あまり聞きたくなかった。

『香ちゃんなんて、香ちゃんなんて……だいっきらいっ!!』

 いや、違う。佐納さんにそう言わせてしまったのは、私だ。

 私がはっきり言いすぎてしまったから……あんなに怯えたようにさせてしまったんだ。

 佐納さんの気持ちは、分からないわけじゃない。人って、興味のあるものにはとことんしつこくなるから。