「こうちゃん、折羽さんにお礼したいって言ってて……確か、駅前のフィナンシェを渡すって言ってたような……」

「行く。会う。」

「へ?」

 駅前のフィナンシェを貰えるなら話は別だ。会わない以外に選択肢はない。

 密かなお菓子オタクである私は、フィナンシェが特に好き。

 それが駅前のとなると、この機会を逃すわけにはいかない。

「……フィナンシェ、好きなんだね。」

「うん、好き。いつ会えばいいの?」

「え、えっと……明日の放課後に校門前で渡す、って。」

「了解。」

 私はまんまとフィナンシェにつられ、佐納さんに会う事になった。

 ……これが面倒事の入口だと知らずに。



 そして来たる次の日の放課後。

 フィナンシェが貰えるとわくわくしていた私は、さっさと教室を飛び出し靴を履き替えた。

 静流は今日図書委員会の仕事があるらしいから、変に連絡しなくてもいい。

 というか連絡したら怪しまれるだろうな……静流のことだから、問い詰めてきそうだし。

 ぼんやり考えながら、佐納さん(フィナンシェ)を待つ。