「……ん、分かった。香がそう言うなら、そうする。」

 物分かりは良いようで、静流は腕を解いてくれた。

 ほんと……心臓に悪い。

 多分私が狼狽えている事も含めて静流は楽しんでいるんだろうけど、それはそれで悪趣味だ。

「明日になったら、また甘やかしてもいい?」

「……勝手にすれば。」

 静流、どれだけいちゃつきたいんだか……。

 悪態を吐きたくなり、ジトッとした視線を向ける。

 けど気付いていないようで、ふっと微笑む。

 ……ムカつく。

 余裕がありそうなのも、気付かないのも、全部ムカついた。



 その日から約3日が経ったある日。

「折羽さん、隣いいかな?」

「ん、どーぞ。」

「ありがとう。」

 朝ホームルームが始まる前、私は中庭のベンチで暇を持て余していた。

 そんなところに来た女の子、立川さん。

 以前、私と立川さんはとあるいざこざがあった。静流関係で。

 だけど今は何故かある程度仲が良く、時折話すようになった。

 正直、裏があるとしか思えないんだけどね。