静流のこの手を振り払おうと思えば、私にはできた。

 ……けど、できない。

 抵抗する気力が起きなくて、近くの空き教室に連行された。

 私を椅子に座らせ、その目の前にしゃがむ静流。

 教室の外では、授業開始のチャイムが鳴っている。

 授業を無断欠席してしまった……ヤバい。

 心の中ではそう焦るも、静流から逃げる事なんてできないのは分かっている。

 抵抗するだけ無駄だし、疲れる。

 でも、どちらからとも口を開けない。

 緊張から、気まずさから、話せないんだと思う。

 どう話し始めればいいかも分からないし、ただただ静寂が過ぎているばかり。

「……香、ごめん。」

「……。」

「香の気持ちも言葉も聞かずに、一人で突っ走った。ごめん。」

「……うん、突っ走ってたね静流。」

 目の前の静流は珍しくしおらしくなっていて、本当に反省しているんだと伝わってくる。

 私はそんな人に怒るほど、心は狭くない。

 それに私も沸点が低かった。すぐに怒って拗ねてしまった。非は私にもある。