仮にも私、折羽香は西条静流の彼女。恋人。

 だったらもう少し、信用してくれたってよくない?

「……静流には、私がそんな尻軽女に見えるわけ?」

「違う。俺はただ、あの男が香に変な事をしてないかが心配で――」

「心配? 嘘吐かないで。」

 私は、静流だから付き合ってる。静流だから、好きになった。

 静流以外の男とは話したくないし、距離を取りたい。

 私はそう思ってるのに、私の気持ちを台無しにするの?

 ……ほんと、やめてほしい。

「私のこと、信用してないんでしょ? だったらそれでいいよ、だったらもうそれで……」

 喧嘩したいわけじゃない。悪い方向に持っていきたいわけじゃない。

 それなのに、思いの丈は溢れてきてやまない。

 気付けば、泣いていた。

 雫が手の甲に落ちてきて、生温いって思っちゃう。

 その手は、すぐに静流に握られた。

「香、話そう。」

「……授業、でなきゃ。」

「今はダメ。」

 いつも強引だけど、今日は強引すぎる。

 泣くのはダメだって思っていた。免罪符のように見えるし、自分から逃げているようなものだと分かっているから。