「これこそが、和葉も知らない、そなたが望んでいた俺の『すべて』だ」

「ま…待って…。…どういうこと…?」


白銀の毛並みの尾を揺らしながら、乙葉にゆっくりと歩み寄る玻玖。

そんな玻玖と距離を取るように、乙葉はとっさに後ずさりをする。


しかし、はっとして足を踏みとどめる。


「よ…妖狐だなんて、素敵だわ…!ますます魅力的――」

「嘘をつけ。顔はそうとは言っていないぞ」


玻玖に本音を突かれ、乙葉は思わず唇を噛んで言いよどむ。


「まあ…俺の正体がどうであれ、そなたを選ぶという選択肢ははなから存在しない」

「どうして言い切れるの…!?そんなの、実際にそうなってみないとわからな――」

「だったら、自慢の『予知眼ノ術』とやらで後の世を見てみるがいい。俺とそなたが結ばれる未来があるかどうかを…」