刃がむき出しの短刀を拾い上げた玻玖は、落ちていた鞘に収める。


「先程、俺を“二度も”騙したと言っていたな。もしや、この短刀も黒百合さんが…?」


玻玖の問いに、和葉は涙ながらにうなずく。

それを見た玻玖は、深いため息をつく。


「…どうして俺は、あのときに気づいてやれなかったんだ」


そうして、ギリッと血が滲むくらい唇を噛む。


「本当は、ずっとつらい思いを抱えていたんだな。…わかってやれず、すまなかった」

「なぜ旦那様が謝るのですか…。悪いのはすべて、旦那様を騙していたわたしだというのに…」

「和葉はなにも悪くない」

「ですが…!」

「なぜなら、お前は負の呪術によって操られているだけだからだ」

「……え…」


驚きのあまり、和葉はそれ以上言葉が出てこなかった。

そんな心当たりは一切なかったから。