そうして、玻玖の頬に愛おしそうに手を添える。


「だから、まずはわたくしのことを知ってください。東雲様なら喜んで差し上げます。わたくしの…初めての口づけを」


乙葉は色っぽく目を細めると、ゆっくりと玻玖の唇へ自分の唇を寄せる。


――そのとき。


…ガチャン!!


突然の大きな物音にパチッと目を開け、顔を向ける乙葉。

その物音で乙葉の集中力が切れたおかげで、ようやく玻玖も体に自由が戻る。


玻玖が振り返ると、そこには廊下の陰から呆然として立ち尽くす和葉の姿があった。


「和葉…!!」


玻玖は叫んだが、和葉はその場から逃げるように走っていってしまった。


「あ〜あ、お姉ちゃんに見つかっちゃった」


悪びれる様子もなく、残念そうにため息をつく乙葉。

そんな乙葉を玻玖は睨みつける。