なんとそれは、乙葉が玻玖にキスをしようとしているところだった。


…ガチャン!!


けたたましい音が暗い廊下に響き渡る。

驚いた和葉が、持っていたお盆を落としてしまったのだ。


その音に気づいて、はっとして顔を向ける玻玖と乙葉。

和葉を凝視する玻玖の隣で、乙葉はニヤリと笑っていた。


この瞬間、和葉の中で――なにかが壊れた。


「和葉…!!」


玻玖が呼び止めるのも聞かず、和葉はその場から離れた。


お盆を落としたときに熱いお茶がかかり、やけどで赤く変色する足の甲。

割れた湯呑みの破片を踏んでしまい、血が滲み出る足の裏。


そんな傷だらけの足のまま、和葉は無我夢中で2人から逃げた。


考えたくもなかった光景が現実のものとなり、それを目の当たりにしてしまった。


2人がそのような関係になっているとは知らなかった。